ログイン「ちょっとちょっと、待ってよ二人共」
再びロラが私たちの間に入る。だが、今回ばかりは仲裁に入る意味がないと思う。私が実力の表明を提案し、彼はそれを受け入れた。事が進むだけで解決へ向かうのだ、終わる気配のない話し合いよりよっぽど合理的である。 「ロラ、これが一番早い解決手段です。どうか許してください」 「いやいや見過ごせないよ、喧嘩は駄目だって」 「騎士も俺もそれで納得してるんだ、口を挟まないでくれロラ」 「いやでも」そう言ってロラは口をつぐんだ。吐きたい言葉があったのだろうが、最終的に諦めて飲み込んだという風だった。奥様は気が気でなさそうに胸の前で手を組んでいる。口を挟む余裕がないのだろう、なんとかして戦闘は阻止しようと口を挟んでいたロラとは違い割と小心者なのかもしれない。 経緯に聞き耳を立てていたのか、広場には既にまばらに村人が円を描くように集まっていた。 「見たところ射手のようですが、武器は使用しますか」 「ナイフがあるからそれを使う。安心しろ、寸止めしてやる」 ある程度の距離を取って向かい合うと、その瞬間から独特な雰囲気が辺りを支配し始める。こうして向かい合って一対一の決闘をするのは初めてだった。 「そっちこそ、その背中のデカブツは使うのか」 「いいえ」 手加減すると思われたのか、彼は不機嫌そうに舌打ちした。決して手を抜くわけでない。殺すために戦うわけではないのだ、であれば背中の大剣を抜く必要はないだろう。彼の実力が分からないとは言え、抜いてしまうと最悪の場合殺してしまいかねない。 「先手は譲ってやるよ」 「いえ、お構いなく」 「そうかい」そう呟きながら彼は腰に差してあったナイフを抜くと、中段に構えた。それと同時に、周囲を取り囲んでいる村人たちのざわめきが落ち着きを取り戻していく。 彼の疾走が始まる。 しなやかな、なかなかに速度のある疾走だ。 一瞬で私の目の前まで距離を詰めると、そのまま首筋目掛けて刃を突き出す。急所を突くことに躊躇のない、狩人のような一撃。私はそれを左に体を傾けることで躱すが、間髪入れずに右足が顔目掛けて飛んでくる。 「鎮め!」 否。 それは手のひらで防御する。専門的な鍛錬を受けていないにも関わらず、今まで村を守ってきた一人という実績に偽りない練度だ。すぐさま足を戻すと、一呼吸置くため後方へ跳ぶ。恐らく普段遠距離から攻撃するタイプなのだろう、ワンアクションごとに距離を取ってしまうのはきっと癖だ。 そこへ、地面を蹴って距離を詰める。 「なっ」 ここまで距離を詰め続けられる経験はないのではないか。自警団と言っても、相手取るのは主に盗賊や獣だろう。それに彼は遠くから弓矢で射撃する役割の人間だ、近距離を強い続ければ自ずと苦手を押し付けることができる。彼が格闘術の達人でもあればこの手は使えないが、足技の練度は先ほど見ている。 足が地に着いて踏ん張りを利かせる前に、肩を押さえつけながら足を蹴り飛ばす。 こうして足を刈ってしまえば、彼の体は力なく地面に叩きつけられる。地に伏せた彼はすぐさま立ち上がろうと膝を立てるが、私が背後に回るには十分な時間と動作だった。首に腕を回し締めつけると、たちまち彼の顔は赤く鬱血していき、破裂しそうに膨らんだ。 「くそっ、こんな……」 私の腕を引き剥がすため、爪を立ててこれでもかと動物的に足掻いたが、やがて気絶して動かなくなった。 「アレクシ!」 意識を失ったのを確認すると同時に腕を緩める。途端、ロラが彼の名を呼びかけながら駆け寄って来た。村人たちもそれに共鳴するようにざわざわと隣り合う林めいてざわめきが走る。 「やりすぎだよ騎士様!」 意識を失った彼を介抱しながら、そう私に言う。 「やりすぎ、とは?」 「とは? って、気絶するまでやるなんて……」 「いいえ。意識を奪うまでやらなければ、彼は止まらなかったでしょう」 意識を失う寸前まで足掻いていたのが、なによりの証拠だ。タップアウトするなり降参の意思表示があったなら、すぐに腕を解くつもりでいた。立てられた爪によるひりつきが、彼が全力で足掻いたというなによりの評価だ。 「だからって、こんな……」 彼に視線を落としながら、何か物を言いたそうに唇を震わせている。どうするのが一番得策だったのか。双方納得したうえでの決闘だったはずで、かつ一番の解決策だった。きっとロラは争い事を好まない性格なのだろう。決闘が始まる寸前まで、止めて欲しいと訴えていた。私とて、早い話だったから決闘に応じた。別に射手の彼と戦いたかったわけではない。だが私は決闘が必要と考え、彼女は不要とした。ゆえに相容れない考え方なのは間違えない。その考えは理解出来ないため、それ以上の言及はしないことにする。 「やるな」 突如ギャラリーの中から、一人進み出た。 「あなたは?」 「オレも自警団の一人だ。今のは見事だった」 岩のような巨躯を持つ男だった。癖のある茶髪に射手の彼と同じ外套を纏っている。外套は自警団である証のようなものなのだろう、周囲の村人達の中にも何人か同じ外套を纏う者がいる。 「お褒め頂き光栄です」 「だが信用したわけじゃない。だから名前だって名乗らない、分かるよな?」 知りたければ次の相手は自分だ、と言うことだろう。まだ信用していないから名前は教えられない、なるほど納得のいく理由だ。それを肯定するように、私は頷いた。 それに答えるように、是と男も頷く。 「もう、なんでそんなすぐ戦いたがるかな」 村人の一人と射手の彼を運びながら、ロラが小言を言う。 これは手段だ。私の着任を阻害する要因の、その排除。私は戦闘狂ではない。それしか能がないのだから、それを解決の手段にするしかない。そうすることでしか、道を拓くことが出来ないのだ。 対面するとより一層その巨躯が目立つ。二メートルに迫る背丈だろう、筋肉もしっかりと纏っている。 「武器は使用しないのですか」 自警団を名乗るわりに彼は何も武装していなかった。 「オレの得物は村の中で振り回すには狭すぎるからな」 言いながら、指の関節を鳴らす。その口ぶりから、どうやら普段用いる武器はその背に相応の大きさを誇っているらしい。ただ、振り回すという言葉から鉄球などの可能性もあるため断定は出来ない。 それにこの体格だ、決闘を行うには十分武器となるだろう。 「お前こそ、本当に使わないつもりか。背中のそれは」 「殺すことが目的ではないので」 なるほどな、腕を回しながらそう独り言ちたところを見るにどうやら納得した様だった。「ウチに泊まってもらうのと何か違うのか」 いましも胸に沸いた疑問を村長は口にした。たしかに、それなら手間が掛かる分この家で夜を明かしたほうが手っ取り早い気がする。「私がロラさんの家に行きたいからです」 さも当然かのように長鎗の彼女は返す。「じゃあしゃあねぇな」 力のない笑みを浮かべながら、頭をかく。娘だからだろうか、先ほどから彼女に対しあまり強く出ていないように見える。もしかしたら普段もそうなのだろうか。よく考えなくとも、村長が控えめに出る必要性はない。 それに室内の面子が言うことはなかった。まあ友人の家に泊まりに行く、そんなニュアンスの話に対し、真面目に意見することなどないと思うが。やれやれ、そんなふうに彼らは笑う。 もちろん私にからも特に言うことはない。口をつむぎ間を置くと、すぐさま長鎗の彼女は「ではそのようにしましょう」という言葉を投げた。 ふと。彼女の言葉は随分と重要視されるのだなと思う。村長の娘という立場からなのか、それともよほどこの村では信用されているのか。彼女以外の面子は父である村長と同年代、或いはそれ以上と見受けられる。私のこれまでの経験上、団体の場合どうしても年長者の意見が尊重されやすい印象だ。その中で、彼女は蔑ろにされず、むしろ会議の進行役としてさらに意見も述べているのだ。これは年長者からしても、また若者としても簡単なことではない。少なくとも、私には至れない。 なんて考えていると、いつの間にか会議は解散という流れになっていた。椅子に座っていた面々は立ち上がり、さあ帰ろうという風。「明日は……そうだな。リーデ、そのまま騎士殿と朝番を頼めるか」 分かりました。言いながら、長鎗の彼女は私の方をちらりと見た。それに、私は同意するよう頷く。ここで、早朝に呼ばれる可能性も消えた。いや、朝の番がどれほど早いかにもよるが。「おし、じゃあ今日のところは解散にするか」 その言葉をきっかけに、会議の面子はぽつぽつと帰宅を始めた。なかには「お疲れ」と労う言葉もあったが、大体はさっと踵を返すか、村長と少し会話を交わして帰路につくという感じである。そも
村長の家の着くと、既に昨夜の面子が顔を揃えて待っていた。それに村長の横に立つ長鎗の彼女。すらりと立ち姿に腹部の前で手を組んだ姿は、先日列車で出会った彼女を想起させる。「戻りました」 言うと、村長は椅子から立ち上がった。「おう騎士殿、お疲れさん。じゃあぼちぼち始めるとするか」 流れから会議だろうか、それとも詰問だろうか。先ほどまでずっと自警団と共にいたため、正直なところこれ以上私に尋問する必要はないように思う。「私はあまり必要とは思いませんが」 吐き出すような、語尾に力を入れたはっきりとした彼女の喋り方。「俺もいらねぇと思うぜ。だがラヴァーグがうるさいからな」 からからと言う。冗談のつもりだろう。しかし、副村長本人の目は冷たく鈍く魚のよう。窘める意味だとは思うが、どうやらあまり自分への冗談を聞き流すタイプではないらしい。「私としては、これ以上騎士様を疑うのは得策とは思えません」 手は横に、まるで兵のような気をつけで。 私としてもその心当たりがない以上同意なのだが、悪事などいくらでもでっち上げられる。例えば物を盗んだ場合。例えば暴力を加えた場合。相手が複数人のであるならはいくらでも押し付けられる。そして、それは覆る可能性は少ない。 副村長の目は、白髪を貶す兵士達と同じように感じる。「どうだろうね、確証を得られないんじゃね」 狡そうな目を光らせてろくろを回す。「それについてですが。……申し訳ないのですが、ロラさんの家に置いてある荷物を調べさせて頂きました」 言って、ちらりと刺すような私への視線。 別に変った物は入っていない。それに、そもそも荷物を調べられることには慣れている。そのため、特に荷物を探られたことに対して思うことはなかった。 私は長鎗の彼女の視線に対し、頷くことで答える。「怪しい物は特に何もありませんでした。大量の着替えと保存食くらいでしょうか。それに…何かを拭くための布、恐らく武器かと」 間違いはない。
「はい、その通りです」「これはブリジットさんが製造してくれたものです。詳しくは彼女に聞くのがよろしいかと」 なるほど。持ち主が説明してくれるほうが手っ取り早いとも思うが、間違いではない。たしかに、製造主が一番、創造物のことを知っているはずだ。鍛冶屋には用があるため、そのときに詳しく聞くのがいいだろう。見せびらかされた物を欲しがる幼児のようだが、しかしあれが何なのか知りたいのは否定出来ない。巨蜴の魔獣を一撃で追い払ったのは、事実なのだから。あれが魔獣を退かせる方法になるのなら、騎士としては今後とても効率的だ。 そういえば、彼女のもとへはいつ行けばいいのか。優先は出来ないと言っていたことから、恐らく他の製造もあるのだろう。そもそも剣とはどれくらいの期間で一つ出来上がるのか私には分からない。出来上がった際には声を掛けに来るのだろうか。 いや、ロラとのやり取りを見るにあまりそのようには見えない。鍛冶場にて立て掛けてあった武器達を思い出す。武器は完成したから、あとはそっちから来い。思い返せば、武器達がそう言っていた気もする。そう考えると、やはり日を空けてこちらから出向くのが手っ取り早いか。 ……決めると、そこで思考を終えた。長鎗の彼女が念のため周囲を見回ると言ったためだ。本来なら自分がやるべきなのだろうが、しかし私は監視下にある状態である。先ほどの巨蜴や、未知の何かに襲撃される可能性もあるだろう。強い武具を持とうとも、彼女自身の力量がどの程度なのか、私は知らない。ただそこは、彼女自身の力量で何とかしてもらうしかない。 長鎗の彼女は私に一瞥をくれた後、そうしてその場を離れた。その視線には「お前は黙って門番の役目をこなせ」と言わんばかりの含みが込められているように感じる。 余計なことを考えず粛々と。 それだけを私に求めている。 その通り、だが、別に私はこの村の指揮下に入ったわけではない。私の任はあくまでカルム村の守護であり、村の一員になれという命令ではなかったはず。 ただ現状どうだろう。 ここに来て、そして双剣の彼女の試験を受けてから、私は誰かからの指示のもと行動している。別に不満があるわけではない。命令を受けて
視線の先にいたのは、果たして巨大なトカゲであった。大きさは先日の狼と同程度と言っても間違えではないだろう。全身を青黒い鱗に包み、下顎からは突出した牙がそびえ立つ。鋭い剛爪を携えた前足から放たれる一撃は、容易に人の命を奪えるだろう。ひと目見ただけで分かる、村の脅威となる存在。今まで気配を感じなかったことや姿の凶悪さから、魔獣に位置する存在と言って差し支えないはずだ。 恐らくは野盗とは関係のない、この近辺に生息する魔獣。野盗の中に魔獣を操れる魔法使いがいるなら話は違うが、だとするならもっと前に襲われているはずだ。徘徊性の魔獣なのかもしれない。火のような巨蜴の魔獣の瞳は、奥様を刺し抜くほど睨めつけている。確かに、もし魔獣が捕食を目的としているなら、この中で一番抵抗力のない者は奥様だ。「奥様、村の中へお願いします」 勧告すると、身を返して去って行く。すぐさま反応して離脱出来る一般市民はなかなかいるものではない。が、巨蜴の魔獣はそれにすぐさま反応して地を這うようにして追いかける素振りを見せた。対して、即座に地面へ向けて大剣を叩きつけることで進路方向を遮る。 巨蜴の魔獣は脚を止め、今にも切れそうな目つきで私を睨みつけた。「シメオン様、この村はこんなにも毎日のように脅威に脅かされているのですか」 問うと、杖術の彼はその質問を払いのけるように頭を振って否定した。恐らくは本当だろう。もし本当に普段から外敵の脅威に襲われているのなら、そもそもヤグラが出来てからでいい、なんて流暢なことを言っている場合ではないのだ。 巨狼に半蛇、それに野盗と目の前の巨蜴。なんて、タイミングの悪いときに着任してしまったのだろう。 ただ、脅威は常にやってくる可能性がある。現にいまは、目の前の巨蜴の魔獣に対処しなければならない。捕食の邪魔をした私を腹立たし気に見ていた魔獣が、その躰を完全にこちらへ向ける。どうやら標的を私へと変更したらしい。そのままその頑強な爪による一撃を、私目掛けて振り下ろす。揮われた爪撃は、しかし大剣を盾にするようにして防ぐ。 途端、鼓膜を襲う金属的な音。それはその一撃が、この鉄塊に相当する威力であることを示している。しかしその間に、杖術の彼は既に動
交代の者は昼を告げる、歌うたいの声と共に現れた。記憶の中を掻き探すが、やって来た彼は初見である。赤茶の波打つ豊かな髪を、項のところでまとめているその者。内側から肉を削り取られたように凹んだ頬に、何か遠くの物を見つめているような、少しぼんやりとした目つき。手には装飾の施された杖が握られていることから、恐らくは杖術を用いるのだろうと推測出来る。魔法使いとも取れるが、ロラや風使いの彼女を見るにどうやら魔法に杖は必要ないらしい。 杖術の彼は姿勢が悪く、獣みたく背中を丸めていた。「お初にお目にかかります。騎士のエメ・アヴィアージュと申します」 あまり言葉を交わしたくないのか、頭を軽く下げ、それきりだ。どちらにせよ、何も言ってくれないのは不便である。 そう思っていると、彼はおもむろに杖で何かを地面に刻み始めた。杖を走らせるごとに鳴る、がりがりという音。地面の固さから、もし持ち手が木製であったら刻むのは難しいだろう。そうして地面に書かれたのは、果たして「シメオン」という文字であった。親指を立てて自分を指し示していることから、恐らくは自分の名前だ。「シメオン、様」 確認するように、言う。対して彼は一度だけ点頭し、今刻んだばかりの自分の名前を足で消した。そしてヤグラの骨組みに体を投げつけるように腰かける。 それきり、杖術の彼は沈黙してしまった。 改めて彼を見てみると、茶色い外套で覆い隠してはいるがその身はだいぶ痩せ細っている。その身で杖を揮うとなると、威力には些か疑問が浮かぶ。 兵士時代のことを思い出すに、杖術を用いる者に会うのは稀だ。私も訓練の際に教官が使用しているのを見たことがあるだけで、実際の戦争で対面したことはない。その気になれば出来るのだろうが、杖術は人を殺すことに向いているわけではない。殺さずに制圧することには長けていそうだが、戦場でそれが必要になる場面は記憶にあるかぎりなかった。 杖術の彼も、そういったつもりでいるだろう。一人でも捕らえることが出来れば、尋問なり何なりして根城の場所を吐かせる。不殺を意識しているということはそういうことだ。略奪が目的なのか、或いはただの偵察なのかは分からないが、村に脅威を与えている以上、例え命のや
空は雲でいちように覆われていた。雨でも降るのだろうか。その重苦しい曇りに、なんとなくうっすらとだけ光が入ってくるボロ小屋にいる気持ちになった。 窮屈な視線が注がれるのを嫌でも感じる。自警団の者とすれ違うたび、その眼差しには冷たいものが宿っていると分かった。ただ朝の挨拶をした際、返してくれる者とそうでない者とがいる辺り、恐らくは自警団でも考えが二分化しているのだろう。 私に対する感情を。 村長と副村長がその例だ。 不安要素として早く結論を出した副村長、それに対しあくまで穏便に様子を見る村長。自警団でも、その二つの意見が主立っているのだ。村人たちは睥睨の眼で私を見てはこなかった。どうやら村人たちには私が間者の疑いがあることを未だ言っていないようだった。恐らく混乱を避けるために。だが、明らかに自警団が警戒しているのだ、野盗の説明をしないわけにはいかないだろう。現に何人かの村人は、挨拶の返事こそ返してくれたものの、その眼はどこか疑わし気な瞳だった。それはそうだろう、野盗が現れた場合、対処すべきは私なのだから。 その眼は正しい。自警団は昨夜から警戒しているなか、私はこうして一夜明けてから動き出している。村長たちから言われたから、なんて理由は村人には関係のないことだ。あまり印象は良くないだろう。責務を全うしていないのだ。そしてその印象を覆すには、結果で示すしかない。 ……何も深く考える必要はない。ただ職務を為せばいいだけだ。 ほどなくして、村の入口に立てられたヤグラが見えた。あまり高いようには見えない。精々、村の入り口に建つアーチと同程度だ。村の周囲を警戒するのを目的としたものなので、別に間違ってはいない。「やあ、来たね」 どこからか声がした。 それは明らかに、双剣の彼女の声だった。「おはようございます」 ヤグラの上から彼女が顔を覗かせる。ただ完成したとは聞いていないため、恐らくは彼女が勝手に使っているのだろう。一見完成しているように見えるが、そう伝えてこないということは何かしら事情があるはずだ。彼女にそれは伝わっているのかは分からないが、ともかく今の段階で私がそれを使用す